水槽アイテム・生体紹介

なぜ水草の肥料はカリウムから始めようと言われるのか【不足する原因と対策】

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今回は水草の育成で添加する液肥や固形肥料を与えるとき「カリウム」が重要と言われる理由に関する内容です。

水槽に入ってくる栄養はほぼ魚粉由来

魚のエサのパッケージの裏を見ると「フィッシュミール」という表記がほぼあります。

これは「魚粉」です。

魚粉には色々な栄養素が入っていますが、カリウムが少ないというのが欠点です。

元素魚粉のミネラル含量
Ca4.21
P2.66
Mg0.21
K0.68
Na0.97
Cl0.66
Fe311
Cu7.7
Zn94
Mn11
I6.71

出典:佐子田 嘉明, 後藤 尚也, 石橋 晃, 飼料学(95) -VI 動物性飼料原料-, 畜産の研究 = Animal-husbandry 養賢堂 67巻2号 p. 247-252 2013年2月, 表15よりCP65の値を加工して掲載。単位はCa,P, Mg, K, Na, Clが%,その他は mg/kg

これだとN(窒素)の量がわからないので、別の文献のデータも引用します。

  • 窒素:6.6%
  • 燐酸:7.8%
  • 加里:0.9%

出典:田口 義広, 米山 誠一, 緩効性肥料を利用した茶園の施用窒素量削減の試み, 茶研報81:17~23,1995, 表1を加工して掲載

肥料用の魚粉ですが原料は同じ魚なので、成分に大きな違いはないと仮定しました。実際はタンパク質の量などで違いがあるのですが、目安としては窒素とリンは同じくらい、カリウムは少ないというのは変わらないと思います。

窒素の量が不安なのでもう少し調べてみると、魚粉の主原料の一つであるイワシの窒素量というのが調査されています。

マイワシ:全窒素% 2.60

出典:上野 照雄, 森嶋 伊佐夫, 山本 和子, アミノ酸スコアによるイワシ蛋白質の栄養価の評価, 鳥取大学農学部研究報告 = Bulletin of the Faculty of Agriculture, Tottori University, 43巻 p. 9-13, 1990年, 第1表のNo.1のデータより

またリン酸の量も調べてみます。

イワシ丸干し:リン 1,200mg/100g

出典:社団法人 全国まき網漁業協会, おいしいイワシ料理

以上より100gあたりの窒素の量を2.6%とすると2.6g程度となります。

また100gあたりのリンの量は1.2g程度となります。

窒素が極端に少ないということは無さそうです。傾向として魚粉には窒素とリンが多く、カリウムが少ないというのは正しいと言えそうです。

つまり水槽に入ってくる栄養は窒素とリン主体でカリウムが少ないと言えます。

水草が要求する窒素・リン・カリウムの量

水生植物に関するカリウムの吸収量に関する研究は少なく、はっきりしないのですが、例えばミクロソリウムなどのシダ植物に関しては、同じシダ植物のヤマイヌワラビとオシダに関して研究したものがあるのでそれを参考に考えます。葉の窒素とリンとカリウムの含有量に関するデータです。

出典:魚住保幸, 大山に自生する草本植物における成長戦略に関する植物栄養学的研究:無機元素集積特性および乾物生産と窒素代謝の関係, 鳥取大学 博士論文, 2014年, 図2-5よりグラフを読み取って作成

植物名窒素含有率範囲[mg g-1]リン含有率範囲[mg g-1]
ヤマイヌワラビ約20〜40約1〜8
オシダ約15〜45約1〜5
植物名窒素含有率範囲[mg g-1]カリウム含有率範囲[mg g-1]
ヤマイヌワラビ約20〜40約6〜38
オシダ約13〜50約4〜25

結論としては多少の差はありますが、シダ植物の2種は葉の窒素に対するリンの量ではリンが窒素の1/5程度、窒素に対するカリウムの量ではカリウムが窒素の同量〜1/2程度となっており、カリウムの量がリンよりも多いと言えそうです。

つまりミクロソリウムなどのシダ植物は植物体のほとんどが葉ですから、葉をそれだけ構成するには葉の構成物質を外部からその分量取り込む必要があり、葉の含有無機物質とミクロソリウムが吸収する無機物質の量は傾向として一致すると考えられます。もちろん代謝の機構によっては出たり入ったりする速度差などがある可能性はありますが、傾向としては妥当な仮説と思われます。

リンに関してはこの結果を裏付けるような研究も存在します。窒素が約4倍から7倍多く吸収されていますね。

吸収されたTINおよびPO4-Pの比は、生育時期によって変化したが、3.8~6.8の間にあることが明らかになった。

小浜暁子、江成敬次郎、玉置智、中山正与, 「水生植物(マコモ)による窒素・リン吸収量の評価」, 日本水処理生物学会誌 第39巻 第2号 59-66 (2003).

つまりカリウムの要求量はリンより多いと考えられ、魚粉はカリウムのほうが窒素とリンより少ないので、明らかにカリウムが不足します。

カリウムの液肥は大切

結局水槽ではカリウムが不足するというのはあるので、カリウムは多めに何らかの方法で添加する必要があります。

おすすめはカミハタから出ているトロピカ茶液。

「三大栄養素のうち水槽内で不足しやすいカリウムおよび、水草が必要とするほぼ全ての微量元素を含んだ栄養剤です。」(カタログより)

魚粉の微量元素には偏りがあるので、適量にするために微量元素も入っている使いやすい液肥です。窒素とリンが入っていると魚粉で供給されるので液肥でさらに追加するとコケの素になりがちなので、窒素とリン酸を省いたこの液肥は考えられていますね。

その他大手から出ている液肥もカリウムの補給ができます。

「各種ミネラルを含有し、水草の生長に必要な全ての栄養素が水草の葉の発育を促進します」(カタログより)

これ一本でとりあえず必要な栄養は供給できるでしょう。

PlantsFineK(カリウム)は熱帯魚通販大手charmで使用しているカリウム液肥です。

カリウムの補給にいいんじゃないでしょうか。

最後がトロピカの緑液。

「植物に必要な三大栄養素である窒素・リン・カリウムと、ほぼ全ての微量元素を含んだ栄養剤です。」(カタログより)

水草水槽の生体が少ないと餌の量も少なくなるので水草に供給される窒素とリンが少なくなります。そういうときにこれ一本で栄養素をすべて供給できるトロピカの緑液を使うといいんじゃないでしょうか。

まとめ【カリウムが不足するので補いましょう】

今回はなぜ水草水槽の液肥はカリウムから始めましょうと言われるのか、その根拠とそれに対する対策を解説しました。

やはりカリウムは不足するので何らかの方法で補う必要があるということですね。

光合成が阻害されても水草は育たないのでご注意を。光と温度とCO2も適切な値にする必要があります