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生物ろ過って何?硝化以外の役割も解説

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今回は生物ろ過について詳細に解説してみようという内容です。

目次

水槽のろ過は3つある

まず基本的な話として水槽のろ過には3種類あるというところから解説していきます。

  • 物理ろ過
  • 生物ろ過
  • 化学ろ過

物理ろ過

フィルターを利用して水中の細かいゴミなどを濾し取って水中から除去するろ過です。

濁りレベルの細かいゴミは取れませんけど、そこそこ大きな髪の毛とか植物の葉っぱのかけらとかそういうものを除去するろ過です。

生物ろ過

簡単に言うと「硝化」によってアンモニウムイオンを硝酸イオンまで分解するろ過です。

ただ広義には「水中有機物の分解」とか「汚れの凝集作用」まで含む考え方もあります。

重要なろ過なので以降で詳細に解説します。

化学ろ過

ゼオライトや活性炭には内部に濁りの原因物質などを吸着する作用があり、その性質を利用することで水槽の濁りや黄ばみを取り除くろ過を言います。

ゼオライトや活性炭には吸着限界があるので、継続的に使いたいときはそれら吸着剤を定期的に新しいものに交換する必要があります。

生物ろ過ってなんだ?

硝化が最重要

一番重要なのは硝化作用です。

硝化というのは水中のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに分解し、それをさらに硝酸イオンまで分解して水中に蓄積することを言います。

アンモニウムイオンは毒性が高く、その中毒作用などについては以下の記事で詳細に解説しました。

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主に以下のような症状が見られます。

  • 鼻上げ
  • 底でじっとしている
  • 餌を食べない
  • 水面で口を頻繁にパクパクさせる
  • エラの開閉が高速になる
  • 体色が変化する
  • フラフラ泳ぐ
  • 目の白濁
  • 尾びれに血の筋が入る

なんとなく呼吸が苦しそうだなとか、見た目に元気がない・異常があるというときはアンモニア中毒の可能性があります。

そのまま放置すると魚が死んでしまうので、直ちに水換えをしてアンモニアを薄める必要があります。

こうならないためにフィルターのろ材にいる硝化菌である、アンモニア分解細菌(亜硝酸菌)と亜硝酸分解細菌(硝酸菌)に働いてもらって、アンモニア(アンモニウムイオン)を硝酸イオンまで分解してもらいます。

この硝化について詳細に解説した以下の記事もご覧ください。

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亜硝酸もそれなりに毒性があり、硝化菌は「亜硝酸菌」→「硝酸菌」の順に繁殖するので、立ち上げ初期は硝酸菌が足りずに亜硝酸中毒が発生することがあります。亜硝酸中毒はアンモニア中毒みたいな症状を引き起こします。

つまりアンモニウムイオンと亜硝酸イオンはかなり毒性があり、毒性で言えばアンモニウムイオンが最悪、亜硝酸イオンが中程度、硝酸イオンが低程度の毒性を持つことになります。

硝酸イオンは比較的無害ですが、過剰蓄積で食欲不振などを引き起こすので過剰蓄積はいけません。

水槽では硝酸イオンをこれ以上分解できないので、定期的な水換えによって排出しています。水草があれば若干硝酸塩を吸収してくれるのですが、多くは期待できないので基本的に定期的な水換えが必要です。

立ち上げ初期は水換えの頻度を調整しないとアンモニウムイオンや亜硝酸イオンが蓄積してしまいます。それについて解説した以下の記事もご覧ください。

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上の記事でやりましたが、硝化に関するバクテリアが定着するまでの期間は、だいたい1ヶ月半くらいです。

水中有機物の分解

硝化を行うためには水中のフンや尿、枯れ葉の残骸などの有機物が水中の微生物によって分解されてアンモニウムイオン(アンモニア)を生産する必要があります。

これの化学式は以下となります。

CnHaObNc+(n+a/4-b/2-3c/4)O2→nCO2+(a/2-3c/2)H2O+cNH3

(参考(1):松尾友矩, 田中修三, 安田正志, 田中和博, 長岡裕, 大学土木 水環境工学, オーム社, 1999年)

窒素を含んだ有機物が二酸化炭素と水とアンモニアになる反応です。

これがさらに硝化によって以下の化学式の反応をすることで硝酸イオンまで分解されます。

2NH4++3O2→2NO2+4H++2H2O+化学エネルギー

2NO2+O2→2NO3+化学エネルギー

この反応に酸素が必要です。なので硝化をちゃんと行いたいならエアレーションなどで酸素を供給すると手っ取り早いです。

アンモニアとアンモニウムイオンの変換はどうなっているのかという疑問もあると思うので以下の化学平衡の式も載せておきます。

NH3+H2O⇄NH4++OH

pHが低いほうがアンモニウムイオンの割合が大きくなり、pHが高くなるにつれアンモニアの割合が増えます。

この割合について計算したのが以下の記事です。

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pH=7のときは

NH3:0.56%

NH4+:99.44%

くらいになります。ほとんどがアンモニウムイオンで存在することがわかりますね。

話が逸れましたが、要するに窒素を含んだ有機物がアンモニウムイオンになる過程までを生物ろ過として扱うことがあります。

汚れの凝集作用

水中の微生物は増殖するとフロッグ(活性汚泥)という沈殿物を生じたり、バイオフィルムというヌルヌルしたフィルムを形成します。

これらには凝集作用といって、水中の濁りの原因となる微細な物質を吸着する作用があり、これによって濁りの原因物質が補足されて水中からフロッグやバイオフィルムに移動するので水が透明になります。

ここまでを生物ろ過と呼ぶこともあります。

またフロッグやバイオフィルムには硝化菌が住み着くので、その意味でもこの2つは重要です。

活性汚泥やバイオフィルム

一応活性汚泥やバイオフィルムについても解説しておきます。

なお活性汚泥にもバイオフィルムにも酸素が必要なので、エアレーションなどで水中に酸素を送ることは重要です。

活性汚泥

活性汚泥というのは有機物を好気性(酸素を利用して活動する)微生物と反応させると形成される小さな塊のことです。

これは沈殿するので、上澄みだけを利用するときれいな水が得られます。

これを利用したのが下水処理で有名な「活性汚泥法」です。

水槽のフィルターに次第に溜まっていく茶色いゴミみたいなものもこの活性汚泥です。

つまりフィルターにゴミが溜まっていくと活性汚泥が蓄積していることになり、これは凝集作用を持つので水の濁りを取ってくれて水が透明になります。要するに汚れを捕縛してフロッグになってくれるので汚れが水中から除去されます。

だからフィルターのろ材をきれいにしすぎるとろ過能力が下がります。

ただ活性汚泥はフィルターの目詰まりの原因にもなるので「ホドホド」にきれいに維持するのがコツです。

また活性汚泥には硝化菌が含まれます。

元来, 硝化菌と脱窒菌は活性汚泥内に野生的に共存するものであるが, これらの微生物に影響する主な因子は溶存酸素濃度と考えられ, 硝化作用, 脱窒作用をより確実に行なう方法として硝化槽, 脱窒槽と槽を分離し, 硝化槽では溶存酸素を十分に供給し, 脱窒素槽では無酸素状態にすることにより所期の目的を達している.

中西 弘, 石川 宗孝, 活性汚泥法による硝化・脱窒 ―好気性脱窒を中心として―, 環境技術/8 巻 (1979) 9 号

バイオフィルム

固体に固着して増殖するフィルム状の細菌集団をバイオフィルムと言います。

このぬめりのあるフィルムにも硝化菌が住み着いて硝化が行われます。

バイオフィルムにも凝集作用があり、これが濁りなどの原因物質を捕縛してくれるので水が透明になります。

排水が生物膜の表面を流れる際に、生物膜内の微生物が排水中のBOD成分などの汚濁物質を効率的に捕捉し、分解・除去してくれます。

株式会社 澤本商事, 工場の排水処理における「生物膜」とは

バイオフィルム内の微生物が有機物を分解して透明にする作用もあります。

フィルターとの関係

フィルターでは生物ろ過が行われている

簡単に言うとフィルターでは生物ろ過が行われています。

例えば外部フィルターとか上部フィルターのセラミックろ材・プラスチックろ材などには、その表面そのものやろ材の空隙、ろ材表面に形成されたバイオフィルムなどに硝化菌が住み着き、そこで硝化が行われ、アンモニウムイオンを硝酸イオンまで分解し、水槽の水の無毒化を行っています。

フィルターのろ材には無数の空隙があることが多いです。

これは空隙がろ材の表面積を増すからです。

表面積が大きければ大きいほど硝化菌はたくさん住み着きます。

だから外部フィルターのセラミックろ材には内部にたくさんの空隙があるし、スポンジフィルターのスポンジにはたくさんの小さな空間があります。

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実際はどんな種類のフィルターにも生物ろ過の機能はあります。

あとはそのフィルターのろ材にどれだけの「総表面積」があるかどうかという問題です。

「外部フィルター」とか「改造した外掛けフィルター」とか「スポンジフィルター」とか「上部フィルター」とか「底面フィルター」なんかは生物ろ過の機能が高いと言われています。

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我が家はほとんどの水槽で「改造した外掛けフィルター」を利用しています。

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なお、投げ込みフィルターをご紹介しませんでしたが、投げ込みフィルターも水槽サイズに合ったものを選択すればそれほどダメなフィルターではありません。

ロカボーイとストロングスポンジの組み合わせで生物ろ過がちゃんとできるという内容で書いた以下の記事も参考にしてみてください。

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硝化菌はどこからやってくるのか

なお硝化菌は自然界にたくさんいます。土の中なんかにもたくさんいて、わざわざバクテリア剤を買わなくてもフィルターを回しながら、水槽にエサを入れて、魚を入れておけば、硝化のサイクルが回って自然と硝化菌は増えていきます。

この硝化菌の定着手法でよく行われるのがパイロットフィッシュを使う方法です。

立ち上げたい水槽を用意して照明やフィルターやヒーターなど様々な機器をフルセットします。

そこにアカヒレなどの丈夫な魚を入れてエサを与えてひと月くらい飼育します。

アンモニウムイオンと亜硝酸塩と硝酸塩の濃度を試薬で測りながら、アンモニウムイオンと亜硝酸イオンが検出されなくなったらアカヒレを撤退させ、本番のお魚を導入します。

パイロットフィッシュを使わない方法として水換え頻度を調整する方法もあります。パイロットフィッシュの方法よりはアバウトになりますが、それなりに有効です。その方法をご紹介した以下の記事もご覧ください。

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なおどのような方法でも硝化菌は水温が高いほうがよく増殖するので、特に熱帯魚の水槽立ち上げのときはヒーターを使うことをおすすめします。

ケチってヒーターを使わずにパイロットフィッシュとか高頻度水換えで硝化菌を育成しようとすると思ったようにアンモニア濃度とか亜硝酸濃度が下がらない場合があります。

また硝化菌の反応には酸素が必要なので、なんかうまくいかないときはエアレーションで酸素を供給してあげるとうまくいきやすいです。

エアレーションの泡は細かいほうが良いです。その内容を解説した記事が以下となります。

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まとめ【生物ろ過の仕組み】

今回は生物ろ過の仕組みについて詳細に解説しました。

基本的に硝化がほとんどですが、バイオフィルムとか活性汚泥まで含めて総合的に水質浄化まで扱うこともあります。

なんか濁るんだよな〜というときは生物ろ過を見直して、ろ材表面積の増大とエアレーションの強化で活性汚泥とかバイオフィルムを増やすといいかもしれませんね。下水処理なんかはこの原理で水を処理しています。

生物ろ過が完成するには1ヶ月半くらいかかります

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