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今回は60cm規格水槽に外掛けフィルターを使う方法を解説します。
60cm水槽でも外掛けフィルターの需要があるシーンはあります
60cm水槽に外掛けフィルターが向かないと言われる理由
一般に外掛けフィルターを60cm水槽に入れるのは向かないと言われています。
- 生物ろ過が足りない
- 改造すると重くなってガラスが割れる可能性が上がる
- フィルターサイズが大きくなるので水槽外に場所を取る
まず外掛けフィルターのろ過マットは薄いマットだけなので、小型水槽用の外掛けフィルターでさえ生物ろ過が足りないとよく言われます。
外部フィルターなどにどっさりリングろ材が詰まっている状況に比べ外掛けフィルターのろ材はあの薄いマットだけなので、圧倒的に生物ろ過が足りません。薄いウールの部分くらいにしかろ過バクテリアが定着しないからです。
外掛けフィルターはろ過マットに活性炭が混ざっているので、これが化学ろ過をして水槽の汚れを吸着してろ過の不足を補っています。
濁りなどは化学ろ過で除去して、生物ろ過はウール部分でなんとか最低限行うという方式でろ過を維持するのが外掛けフィルターです。だからこそ化学ろ過用の活性炭が寿命を迎える設置数週間後のタイミングでろ過マットを交換してくださいとなるわけです。
これを解決するために「改造」と呼ばれる方法が取られることが多いです。
我が家の実感として30cm規格水槽に対して0.5Lくらいのリングろ材でちょうどいいくらいですね。
これが0.28kgくらいなので、これに本体重量(テトラAT-50)0.66kgが追加されて約1kgの重さがガラスにかかることになります。
これくらいなら十分耐えられますが、60cm規格水槽対応の外掛けフィルターとして例えばテトラのAT-75Wを選択すると、本体重量1.4kgとなり、だいたいろ過槽がAT-50の2倍なので、1Lのリングろ材を入れるとして0.56kg入るので、合計すると1.4+0.56≒2kgとなります。
2kgなので2Lのペットボトルの重さが分散されず一点にテコの原理で付加されると考えるとあまり良い状態ではないです。耐えられないことはないけど、ちょっと不安。
また水槽外にろ過槽があるのは魚の遊泳スペースを確保するという点では有利ですが、水槽外に大きなろ過槽が出るので、このスペースの確保と圧迫感という視点では外部フィルターには劣ります。
ガラスは耐えられるのか
一応簡単に計算してみます。本職ではないので正確な計算ではないですが、概要を知るくらいにはなると思います。
外掛けフィルターの吐き出し口で水槽に引っかかっている部分に荷重がかかるとして、下部の支え(丸っこいパーツでバランスをとっていますよね)で支持している片持ばりを考えます。
AT-75Wの計算をします。
このときモーメントの最大値Mmaxは、荷重作用点から支えまでの距離を13[cm]=0.13[m]として
Mmax=2[kg]✕9.8[m/s2]✕0.13[m]≒2.548[N・m]
長方形断面の断面係数Zを(bh2/6)とします。ガラスに外掛けフィルターの吐き出し口が引っかかっている部分は細長い長方形断面(b=32[cm]=0.32[m]、h=5[mm]=0.005[m])とします。AT-75Wの横幅をAT-50の横幅16cmの2倍と仮定しました。ガラスの厚みは5[mm]です。
Z=0.32✕0.005✕0.005/6=1.3333333333333336e-06[m3]
最大応力σmaxは
σmax=Mmax/Z=1911000[Pa]=1.911[MPa]
くらいになります。
ではガラスの許容応力がどのくらいかという点ですが、以下の文献によると6.9[MPa]となります。
参考:一般財団法人日本建築総合試験所, 石井 久史, ガラスファサードの設計法について −構造・材料の側面から−, [N/mm2]=[MPa]とした
つまり理論上はテトラのAT-75Wにびっしりセラミックリングろ材を1L(0.56kgくらい)入れてもガラスの強度的には大丈夫と言えそうです。
例えばリングろ材と同量の水がフィルター上にあっても(500mLくらい)全体の重さは2.5kg程度なのでだいたい1.25倍の2.4[MPa]くらいです。
ただこれは静止した状態の話で、例えばフィルター洗浄のときにガラスから離すためにちょっと力を入れたりすると勢い余って割れるという可能性はゼロではないので気をつけましょう。
また今回は梁の長さ方向に対して垂直の荷重がかかると仮定していますけど、実際はもっと荷重には角度があって、もう少し荷重は分散されるはずです。ガラスに2kgくらいの荷重を垂直に付加したらどのくらいの応力になるかという単純な話をしています。
だいたい許容応力が6.9[MPa]で触っていない時の応力が2.4[MPa]くらいなので(重さにすれば2.5kgくらい)、あとこれの2倍の荷重、プラス2.5[kg]くらいの力(合計すると5kgくらいの重さに相当する力)がかかると許容応力にかなり近づいてしまいます。人の力で2.5kgの力は簡単にかかるので注意が必要です。
この辺がちょっと力を入れて重い外掛けフィルターを持ち上げたらバキンとガラスが割れるなんて話に繋がってくるのでしょう。
60cm規格水槽対応の外掛けフィルターにセラミックやガラス製のリングろ材をビッシリ詰めるとやはりちょっと危ないです。後述するようにリングろ材の部分をプラスチックろ材に変更するというのが基本となるでしょう。
実際にセラミックの化学式をアルミナAl2O3と仮定すると密度は3.9[g/cm3]となり(参考:英興株式会社, ファインセラミックス 資料)、水の密度1[g/cm3]の約4倍となりやはりセラミックで空間を満たすより水で満たしたほうが外掛けフィルター全体としては軽くなります。
60cm水槽で本当に外掛けフィルターが使えるのか
外掛けフィルターのろ過マット一枚で45cm規格水槽まで対応しています。
なので水槽の水量的に2倍となる60cm規格水槽では2枚あれば足りるという理屈は成り立ちます。
水槽 | サイズ | 水量 |
30cmキューブ水槽 | 30×30×30cm | 約22〜24L |
45cm規格水槽 | 45×27×30cm | 約29~31L |
60cm規格水槽 | 60×30×36cm | 約59L |
生物ろ過のろ過マットも二倍になるので生物ろ過も足りないことはない。
ただ基本的にろ過マット自体の生物ろ過が弱いのでなんとか改造してろ過容量を増やしたいところです。
では60cm水槽で外掛けフィルターを使うべきシチュエーションは?
良いことが無いように上で述べましたが外掛けフィルターを60cmで使いたい場面というのが存在します。
- 水槽内に遊泳スペースを多く確保したい
- 水草水槽はしない
- できれば安価にろ過したい
- エアーポンプの音がうるさいから使いたくない
上のリストの2と3だけを満たしたいならスポンジフィルターをおすすめします。
2と3と4を満たしたいなら水中フィルターをおすすめします。
ただ1と2と3と4を満たすなら外掛けフィルターとなります。
- ろ過槽が水槽外なので水槽内が広々
- 水草水槽でないならCO2の漏れを考えなくて良い(外掛けフィルターはCO2が漏れやすい)
- 外部フィルターよりは安価
- 水中ポンプで水を回すのでエアレーションより静音
価格に関してですが、例えばエーハイムの60cm規格水槽まで使える2213の場合15,924円くらい(2025年3月12日のAmazon価格)。
そこがテトラのAT-75Wが4,029円くらい(2025年3月12日のAmazon価格)。
60cm向けモデル(AT-75W)でも圧倒的に外掛けフィルターのほうが低価格となっています。
改造をするにはプラスチックやスポンジのろ材を使う
上で強度計算をしましたけど、あくまでAT-75Wにセラミックリングろ材を1L分投入する場合を想定しています。
強度的には大丈夫と考えられますが、本体重量も上がるのでグッと力を入れてバリンとガラスを割る可能性も無くはないので、以下の二通りの対処方法があります。生物ろ過を強化するために改造前提で話をします。
- AT-75Wではなく、それより小さなAT-60を使う
- AT-75Wにプラスチックやスポンジ系のろ材を使う
AT-60は我が家で使い倒しているAT-50とサイズが同じで流量を改良したモデルで、強い水流でろ材を通り過ぎる水の量を増やしてろ過を活発に行うという発想のフィルターです。60cm水槽まで対応しています。
これならAT-50と入るろ材の量は同じなのでセラミックリングろ材でも十分改造できます。重さの心配はほぼ無いです。コスパの良いろ材を以下の記事でまとめているのでご覧ください。
もう一つがAT-75Wクラスの外掛けフィルターのろ材をプラスチックやスポンジ系の軽いろ材にすること。
ある程度使っている人が多いものをご紹介します。どれも基本的に軽く、ろ過槽にセラミックの重さではなく水の重さを適用できるくらいと思われます。スポンジなんかは特にほぼ水と仮定して良いでしょう。つまり外掛けフィルター全体が軽くなります。
まずはキャビティ。
無数のヒダヒダ表面で生物ろ過を行う仕組みです。リングろ材より表面積が足りないと感じるかもしれませんが、使っている人は多いです。効果はあるようです。
ネットに入れて利用したほうが使いやすいです。隙間ができるならろ材の余りなどで塞いでください。ウールでもいいです。
次がバイオメディア。
要するに多孔質スポンジをサイコロ状にカットした製品です。スポンジフィルターではエアレーションが必要でしたが、外掛けフィルターにこれを入れるなら水中ポンプでスポンジフィルターのろ過力が手に入るので静音・高性能なろ過が可能になります。
バイオメディアには専用ネットが付属するのでそのまま外掛けフィルターに入れることが可能です。
2セット買うとちょうどよいと思います。
最後が「AT-75Wの付属品だけでろ過する」です。
AT-75Wには「テトラ バイオフォームキット」という粗めスポンジみたいな材質の追加ろ材がセットで2つ入っています。
こういうやつです。
セットに最初から入っているので間違って購入しないでください。
粗いスポンジでは表面積が足りないのではないかと思うかもしれませんが、それなりにろ過バクテリアは定着します。
付属のろ過マットであるバイオバッグと合わせて使用すればある程度ろ過できると思います。
なので一応AT-75Wの付属品だけでろ過してみて物足りなかったら(魚の元気とか水の濁り具合、硝酸塩濃度などで判断してください)キャビティとかバイオメディアを検討してみるくらいでいいです。
硝酸塩とかアンモニアとか亜硝酸塩とかの話は以下をご覧ください。
まとめ【工夫次第で60cm水槽でも外掛けフィルターは使える】
基本的に外部フィルターなどがおすすめされる60cm水槽ですが、外掛けフィルターの使いやすさを60cm水槽に導入することは可能です。
ただ重くはなりますので水槽に負荷がかかりすぎるとよくはないです。掃除するときはあまり強い力をかけないようにしましょう。

メンテナンス性など使いやすいさが外掛けフィルターの良さです