金魚の色が薄くなる？色落ちを戻す方法

今回は金魚の色が薄くなるという話題に関して解説します。

金魚が赤くなる仕組み

過去記事で金魚の色が赤くなる理由を述べました。

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金魚を日光浴させていると色艶がよくなると言われています。そのメカニズムからお話します。

カロテノイド（アスタキサンチン）が赤くなる素

これは金魚の赤色がカロテノイド（カロチノイド）の一種であるアスタキサンチンとα-ドラデキサンチンで決定されるからです。

カロチノイドの組成比はastaxanthin40～60%, α-doradexanthin40～60%, xanthophyl類(zeaxanthin(IV),lutein(VII)など)20%前後であり, ケトカロチノイドが80%を占め, 金魚の赤い色はastaxanthinとα-doradexanthinによるものであることが判明した. 通常, astaxanthinとα-doradexanthinはほぼ1:1の割合で存在していることが多いが, 赤味の強い個体ではastaxanthinが60～70%に達し, α-doradexanthinは少ない. 一方, 橙色の強い個体ではα-doradexanthinが多く, astaxanthinが少ない.

秦 正弘, 金魚の色 体色発現の生化学的側面, 化学と生物/11 巻 (1973) 7 号

アスタキサンチンは主に赤色の濃度に影響を与えます。多いほうが赤色が強くなります。

アスタキサンチンは紫外線による活性酸素から体を守るために利用される

このアスタキサンチンですが、抗酸化作用が強く、活性酸素から身を守る働きがあると言われています。

光合成生物（植物，藻類，光合成細菌）はカロテノイドを合成することができ，光合成の機能上必須成分
である．

〔……〕

動物は生合成能力がないが，食餌から取り入れたカロテノイドをそのまま蓄積・利用するか，さらに代謝（酸化，還元，分解など）することができる．

〔……〕

酸素の下（大気中）で生活をしているすべての生物は，細胞や生体膜や生体物質を破壊に導く種々の活性酸素（一重項酸素，スーパーオキシドアニオンラジカル，ヒドロキシラジカル，過酸化水素など）にさらされている．活性酸素は紫外線や化学物質などの外的要因や電子伝達系や食細胞などの内的要因でつくられ，これらを消去するために種々の物質や酵素などが用意されている．カロテノイドは一重項酸素に対して強力な消去活性を持つ．

〔……〕

アスタキサンチンは抗酸化力がほかのカロテノイドより強いことが分かり，主に緑藻ヘマトコッカスから抽出されている．

高市 真一, カロテノイドとヒト, 日本医科大学医学会雑誌/8 巻 (2012) 4 号

また活性酸素は紫外線でよく発生するので、おそらくあの金魚の赤色は紫外線によって発生する活性酸素から身を守るために体内のアスタキサンチン濃度を高めた結果と思われます。

また「青水が色揚げに良い」とも言われますが、それもこの話で説明できて、青水は植物プランクトンによって形成されるので、カロテノイドを合成できます。それを水中から金魚が摂取することでアスタキサンチンを摂取でき、それによって赤色の素が体内に多く入ってくるので赤色にする材料がたくさんあるので赤色になりやすいと言えます。

カロテノイドは金魚が自ら体内で合成できないので、外部（エサか青水の植物プランクトンから）から摂取する必要があります。

アスタキサンチンを金魚に蓄積させるエサ

一方,ゼアキサンチンより酸化されてできるアスタキサンチンは鮮明な赤色である。

〔……〕

故にルテインAが含まれてなくてゼアキサンチンを主成分として含んでいるスピルリナを飼料として与えてやれば, 図4に示したごとくアスタキサンチンに代謝されて鮮明な赤色になるわけである。

松野 隆男, 魚類のカロテノイドとその代謝, 比較生理生化学/9 巻 (1992) 2 号

以上の結果はβ-carotene, zeaxanthinのみがastaxanthinへ転換されること, β-caroteneはわずかしか転換されないがzeaxanthinはよく転換されること, luteinはdoradexanthinにまで転換されるがastaxanthinへは転換されないことを示している。

秦 正弘, 金魚及びにじますのカロチノイド色素に関する研究, 博士学位論文

上の文献からβカロテンよりゼアキサンチンがアスタキサンチンによく代謝されるようなので、食用藍藻の一種であるスピルリナ配合のエサかアスタキサンチン配合のエサを与えると良いでしょう。

人工光より太陽光で色揚げがよくなるのは紫外線の影響

さらに「人工光より太陽光のほうが色艶が良くなる」というのもこの話で説明できて、人工光より太陽光のほうが紫外線がたくさん含まれているんです。

回答：LED照明には紫外線をほぼ照射しないタイプと紫外線を含むタイプがあります。

市販されているLED照明の多くは、紫外線を含みません。しかし、近紫外LEDまたは紫色LEDにより、赤色・緑色・青色の蛍光体を光らせる方式の場合には、紫外線を発生させます。

株式会社大塚商会, LEDは紫外線が出る？

上で金魚が赤くなるのはアスタキサンチンをたくさん体内に蓄えて紫外線による活性酸素から体を守るためと考えられると言いました。

つまり紫外線がほとんどないLED照明や太陽光より紫外線が少ない蛍光灯では紫外線による活性酸素の発生が少なくなり、アスタキサンチンを蓄積する理由がなくなってしまうんですね。

だから紫外線にさらされることで赤くなる機構が働く太陽光のほうが赤くなりやすいというわけでしょう。

付け加えておくと、たしかにアスタキサンチンが豊富に含まれた金魚のエサは売っているのですが、それを与えても太陽光に当てないと赤くなる原因の紫外線が無いので赤くなりにくいと思います。

金魚を赤くするなら太陽光に当てるというのはこういう理由があると思われます。

なおだからといって殺菌灯などの強い紫外線に当てると金魚が死ぬので、室内ならLEDライトで明るくするくらいでいいでしょう。

LEDだと真っ赤にはならないかもしれませんが、健康に飼育することは可能です。

金魚を赤くする方法

人工エサで青水を作らずに金魚を赤くしたいならアスタキサンチン入のエサを与えて太陽光に当てるといいでしょう。と言っても直射日光に長時間さらすと水温の急上昇や必要以上の紫外線量となって逆に良くない影響もあるので適度にすだれなどで加減して日光浴させたほうがよいでしょう。

ガラスは紫外線を減衰させるけど完全に遮断はしない

また紫外線はガラスで減衰するのでガラス水槽はNGという話もたまに聞きますが、その透過率は3mm厚で74.3%、5mm厚で66.4%程度と言われています⁽¹⁾。

板ガラスカタログ上の数値を調べると、3ミリ厚の透明板ガラスは紫外線透過率74.3％と、ある程度の遮蔽性能を持っていることがわかります。

AGC株式会社, １７. 光ー 3 ガラスで紫外線は避けられる？

確かに減衰しますが、無くなるほどではないので、特に色揚げで気にする必要は無いように思います。色揚げが弱いならプラスチックの飼育容器で上から太陽光が当たるようにしてください。

ただすだれを使って遮光してもそれなりに色揚げ効果はあるようなので、太陽光をどんどん強くすればいいというわけでもなさそうなのが難しいところです。

なおガラス水槽に直射日光を当てるとレンズ効果で太陽光が収束して火災の原因になることがあるので、直射日光をガラス水槽に当てないというのは大前提です。気をつけましょう。

直射日光は当たらないけどちょっと明るい日陰くらいが良さそうです。

日光を当てたいのならプラスチック飼育容器やスイレン鉢などですだれを使いながら水温を見て日光浴させましょう。特に真夏の猛暑の中では。

色が薄くなる原因と対策

金魚の色が薄くなる原因は以下のようなものが考えられます。

アスタキサンチンの不足と紫外線量の不足

上の金魚が赤くなる仕組みから、アスタキサンチンは金魚が自分で合成できないので、それが入ったエサや植物プランクトンを摂取しないと赤くする素が無いので赤くなりません。

この対処法としてはアスタキサンチンかそれを代謝によって生成するスピルリナ配合のエサを与える、日光に当てるということが考えられます。

なお日光は直射日光だと水温が上がりすぎたりガラスの場合火災の原因になったりするので、ガラス水槽なら直射日光に当てない、プラスチック水槽や陶器の睡蓮鉢などなら直射日光が当たるときにすだれなどで太陽光を弱める工夫が必要です。特に猛暑のときは。

太陽光の紫外線は結構強いので、直射日光でなくてもそこそこ赤くなるはずです。

もし直射日光を当てたいなら例えば晴れた日の午前中の1〜2時間だけすだれを外して当てる、それ以外は高水温対策ですだれを使うみたいな運用もいいでしょう。

なお出目金などの黒色はメラニンによる黒なのですが、メラニンは基本的に紫外線から肌を守るために生成されるので、黒色金魚が色落ちしてきたら、やはり太陽光に少しでも当てるといいかもしれません。

底砂が明るすぎ（ベアタンク・白にしないのが重要）

底砂が明るい（ベアタンク・白砂）と金魚の赤は目立つので外的に狙われやすくなるため金魚は保護色的な作用で色を薄く調整します。

できれば大磯砂などの暗めの色の底砂を利用すると良いでしょう。

ストレス

熱帯魚などでもよくあることなのですが、導入初期で水槽にドボンと魚を入れるとビックリと輸送ストレスで色が抜けることがあります。

金魚も何らかのストレスや体調不良で色が抜けることがあるので、それが疑われる場合は塩水浴などで様子を見てください。

導入初期の場合は特に何かをするのではなく、よく観察しながら金魚が新しい環境に慣れるのを待ちましょう。

まとめ【太陽光とアスタキサンチンが重要】

今回は金魚の色が薄くなるという話題に関して解説しました。

基本的に太陽光とアスタキサンチン入のエサが主な対策になります。