水槽トラブル・飼育方法

水槽の硬度とpHの関係

水槽トラブル・飼育方法

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今回は水槽の硬度とpHの関係についてその原理的な部分を解説するという内容です。

よく言われること

硬度とpHに関してよく言われることに関しては以下があります。

硬度が上がると炭酸水素イオンの濃度が上がる。炭酸水素イオンはpHを上げるあるいは下がらないようにする効果があるからpHを下げるときは硬度を落とす、pHを上げたいなら硬度を上げるとよい

ただ当サイトで過去に石とpHの関係について解説しました。

この話では硬度が上がるのは石の陽イオン交換によって石側のCa2+などが放出され、代わりにH+が石に取り込まれることでH+濃度が減少し、pHが上がるという機構を解説しました。

つまり硬度が上がることでCa2+などが化学変化を起こしてpHを上げるというよりは、陽イオン交換でH+が減少するためにpHが上がるのであって、硬度の上昇そのものよりもその過程でpHが変動していると思われるということです。

硬度の定義を再掲します。

その中でミネラル含量によって区分される指標を硬度と言い,水中にあるカルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)の合計量をそれに相当する炭酸カルシウム(CaCO3)の量に換算して示されるものである。

三橋 富子, 田島 真理子, 水の硬度が緑茶浸出液に及ぼす影響, 日本調理科学会誌/49 巻 (2016) 3 号

つまり硬度というのはCa2+とMg2+の合計量を炭酸カルシウムCaCO3の量に換算しています。つまり硬度を測って得られるのは炭酸カルシウムの量なので、炭酸カルシウムが何らかのpHに対する影響を及ぼしているのなら、その影響を考える必要があります。もし炭酸カルシウムそのものにpHに対する影響があるのなら、陽イオン交換でpHが下がる以外に硬度そのもの、つまり炭酸カルシウムの影響を追加で考慮する必要があるのです。

上の石とpHの記事ではCa2+とMg2+そのものを硬度として扱っているのでそれに関してはある程度理屈が通っているように思えますが、炭酸カルシウムの影響を考慮していないのでそこを考える必要があります。

今回はこの点に関して深堀していきます。

そもそもなぜCa2+とMg2+をCaCO3に換算するのか

まず硬度を測るにはCa2+とMg2+を測ってその量を算出します。

EDTAはカルシウムやマグネシウムのイオンと1対 1 で反応します。そのためキレート形成に必要な EDTA の量が分かればカルシウムやマグネシウムの 濃度も分かります。

株式会社ユニケミー, 水の硬度 あっちの水は苦いぞこっちの水は甘いぞ

次にこの量から以下の計算式で炭酸カルシウムの量に換算します。実際はEDTAの反応量からもっと簡単に計算できますが、カルシウムとマグネシウムの量から定義通りに計算する方法です。

硬度[mg/L]=(カルシウム量[mg/L]x2.5)+(マグネシウム量[mg/L]x4.1)

この2.5と4.1の意味ですが、炭酸カルシウムの分子量が40+12+16×3=100、カルシウムの原子量が40、マグネシウムの原子量が24とすると、100÷40=2.5、100÷24≒4.1というところから来ています。

つまりカルシウムの重さを炭酸カルシウムに換算すると何倍か、マグネシウムの重さを炭酸カルシウムに換算すると何倍かという情報を考慮して硬度の計算式は成り立っています。

なぜこのような方法で一つの物質(炭酸カルシウム)に換算するのかということですが、例えばカルシウムが炭酸カルシウムの千分の1の重さで、マグネシウムが炭酸カルシウムの10分の1の重さだったとします。これを単純にそれぞれの重さで合計として計算してしまうと、どう考えてもマグネシウムの重さが際立ってしまい、カルシウムが数ではマグネシウムよりたくさんあっても重さを合計すると硬度とはマグネシウムの量であるとなってしまいます。

例えば陽イオン交換においてカルシウムとマグネシウムはそれぞれ2価の陽イオンなので、反応するときはどちらも水素イオン2個と交換されます。

つまり反応を追うときは重さよりイオンの「数」が重要なのです。例えば上の千分の1と10分の1の話では、カルシウムがa[g]あったら、同じ数の炭酸カルシウムは1000×a[g]必要で、マグネシウムがb[g]あったら、同じ数の炭酸カルシウムは10×b[g]必要です。

結果として炭酸カルシウムは1000×a[g]+10×b[g]でカルシウムとマグネシウムの数の合計と炭酸カルシウムの数が合致するときの重さが釣り合うのです。

なんか怪しい感じもするのでもう少し抽象度を上げて考えてみます。

1個200gのリンゴと1個と1個100gのきゅうりがあったとして、これを1パック1Lの水1000gに換算するとします。

リンゴが600g、きゅうりが200gあったとします。

するとリンゴは3個で、きゅうりは2個ですね。じゃあ水では何パックかというと5パックですよね。合計5kg(5000g)になります。これを計算式にすると以下となります。

(600/200)×1000+(200/100)×1000=5000[g]

これを組みなおすと

600×(1000/200)+200×(1000/100)=5000

これって上の千倍と10倍の話と同じですよね。リンゴときゅうりがカルシウムとマグネシウムで、炭酸カルシウムが水です。水の重さから水の数を算出すると5000÷1000=5でリンゴときゅうりの数と合います。

炭酸カルシウムの分子量は100[g/mol]なので、個数(mol)を算出するときに100で割ればよいので都合がよいのでしょう。当然100で割ったときの炭酸カルシウムの数(mol)とCa2+とMg2+の合計数(mol)が合います。これは陽イオン交換などの反応を考えるとき非常に扱いやすいです。

ここまできて考えられるのは「炭酸カルシウムというのはあくまで換算量なので、結局はカルシウムとマグネシウムの量を考えている」ということです。

硬度を測るときも別に炭酸カルシウムを測っているわけではなく、ちゃんとカルシウムとマグネシウムの量を測って算出されています。炭酸カルシウムが実際にあるわけではないのです。

アクアリウムでの「硬度」とは「KH=炭酸塩硬度」だった

アクアリウムで硬度というと「KH:炭酸塩硬度」のことを指します。私はここが不明確だったんですね。

水中のCa2+とMg2+は結合する相手が色々あります。硫酸イオンや塩素イオンの場合もありますが、炭酸水素イオンと結合している場合もあります。

この炭酸水素イオンと結合しているCa2+とMg2+を上の硬度の定義のように計算して硬度に置き換えた場合をKH:炭酸塩硬度と呼び、KHが高い低いで炭酸水素イオンの多い少ないが判断できます。

というわけ硬度を定義通りに計算した「総硬度」とその一部である「KH:炭酸塩硬度」を区別します。

なおフワッと炭酸水素イオンと結合していると書きましたが、厳密には炭酸塩硬度の定義は以下のようになります。

炭酸硬度(carbonate hardness):一時硬度, 総アルカリ度とも呼ばれ水中のCa, Mgの重炭酸塩量を示す。

吉田 郁也, 仕込 (1), 日本醸造協会誌/95 巻 (2000) 9 号

つまり炭酸塩硬度が高ければそれだけCaやMgと結合した重炭酸(炭酸水素イオン)が存在することになります。

炭酸塩硬度の炭酸塩はどうして発生するのか

重炭酸塩が増えるかどうかを考えるときにカルシウムが水に溶けてCa2+になってからの以下の平衡式を考えてみます。

CO2(g) ⇄ CO2(aq) (R1)

CO2(aq) + H2O ⇄ H2CO3(aq) (R2)

H2CO3(aq) ⇄ H+ HCO3 (aq) (R3)

HCO3 (aq) ⇄ H+ CO32- (aq) (R4)

Ca2+ (aq) + CO32- (aq) ⇄ CaCO3(s) (R5)

文献(1):藤田 紗江, 藤田 浩輝, 笹岡 聖也, 中野 幸夫, 海洋酸性化によって石灰化生物が行う炭酸カルシウムの形成が阻害されることを観察できる実験教材の開発と高等学校での授業実践による教材の評価, 科学教育研究/47 巻 (2023) 1 号.

Ca2+ (aq)が増えると(R5)式から水中のCO32-を消費してCaCO3(s)が増加します。これが(R4)式の右辺を減少させ、反応が右に進みます。するとHCO3 (aq)が減少します。このときH+が放出されpHが下がります。

ここまで書くと陽イオン交換でpHが上がっても炭酸水素イオンの減少でpHが逆に下がるとも言えますが、上の文献(1)でもCaCO3(s) は石灰化生物(サンゴとか貝)の骨格を指しているようなので、生物的な反応が必要とも読み取れ、CaCO3(s)が水中に粉になって析出するというわけではないようなので、石灰化生物がいないときは、この反応はあったとして微量の反応と思われます。実際石を入れてpHが下がるなんてことはありません。

つまり石で陽イオン交換でpHが上がるときにCa2+が水中に放出されますが、それによって炭酸水素イオンが化学平衡から増減するというのはなさそうです。

次に石などに含まれる炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが溶けて炭酸水素イオンが増えるという可能性を考えてみます。

これらのイオンは電気伝導度との相関性が高く,図-7 に示すとおりカルシウムイオンと炭酸水素イオンの溶出量の関係も相関性が高い。これは,コアに含まれる方解石が溶脱しているためである。方解石といった炭酸塩鉱物は脈状に挟まれている場合が多く,溶出すると脈状部が開口した亀裂となり,岩盤の風化や破砕が促進されることが想定される。

森加代子, 林幸一郎, 木下篤彦, 水野秀, 今森直紀, 田中健貴, 小川内良人, 岩盤クリープ斜面を構成する岩石からのイオン溶出特性, 砂防学会研究発表会概要集, 2017

石の中には炭酸カルシウムが含まれ、水中では二酸化炭素とともに以下の平衡式が成立します。

Ca2++2HCO3 ⇄ CaCO3+H2O+CO2… …④

参考:長沢 幹雄, 浅い地下水の地下水位と溶存物質の関係, 陸水学雑誌/26 巻 (1965) 3 号

この平衡式より、石の中の炭酸カルシウムが溶けるときに水と二酸化炭素を使って炭酸水素イオンが発生します。Ca2+も発生します。

つまり炭酸カルシウムが水に溶けるときにCa2+とHCO3が発生するため、炭酸水素イオンが発生すると言えます。

マグネシウムに関してははっきりとした反応式を示した文献は見当たらないのですが(以下の追記で式は正しいと言えました)、炭酸マグネシウムが水と二酸化炭素に溶けるというのはあるようなので、以下の反応式から炭酸水素イオンが発生していると思われます。

MgCO3 + CO2 + H2O → Mg(HCO3)2…(※1)

Mg(HCO3)2が水に溶けているので

Mg(HCO3)2→Mg2++2HCO3…(※2)

あるいは

Mg2++2HCO3 ⇄ MgCO3 + CO2 + H2O…(※3)

となっていると思われます。

この反応があったときは炭酸塩硬度を測ればCa2+やMg2+の量が相関性から推定できます。

ではそもそも岩石に炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが含まれているのかという話になりますが、以下の理由により発生します。

カルシウムやマグネシウムを含む岩石(鉱物)は、大気中のCO2と反応して、炭酸塩を形成す
る。これが化学的風化作用と呼ばれる自然現象である1)

Mg2SiO4 + 2CO2 → 2MgCO3 + SiO2
CaSiO3 + CO2 → CaCO3 + SiO2

野口美由貴,山崎章弘, 地球温暖化対策としての二酸化炭素の炭酸塩鉱物化プロセス, 成蹊大学アジア太平洋研究センター, 2022

つまり硬度で気にしなければいけないサンゴ(CaCO3)とか石(MgCO3やCaCO3)は、結局炭酸水素イオンHCO3を水中で発生させるので、炭酸水素イオンを測ればなんとなくCa2+とかMg2+の量を推定できそうです。

追記【式(※1)と(※2)と(※3)について】

上の式(※1)と(※2)が本当に正しいのかやや不安だったのですが、文献が見つかったのでそれを載せておきます。

MgCO3+CO2+H2O→Mg2++2HCO3

水が岩石と反応(風化)しながら流下するにつれて,Na+,Ca2+,Mg2+,HCO3等の溶存成分は増加する。

長溝 忍, 地すべり地内における地下水区分の一手法, 地すべり Vol. 15, No. 4 (1979)

これは(※1)(※2)式そのものですので(※1)(※2)式は正しいと言えます。

また(※3)についても以下の文献の平衡式をまず考えます。

Mg2+(aq) + HCO3(aq) ⇌ MgCO3(s) + H+(aq) (3.4)

James A. Surface, “In situ High Pressure and Temperature 13C NMR for the Study of Carbonation Reactions of CO2“, Washington University in St. Louis Washington University Open Scholarship, 2013

これと上で登場した(R2)と(R3)式を考えます。

CO2(aq) + H2O ⇄ H2CO3(aq) (R2)

H2CO3(aq) ⇄ H+ HCO3 (aq) (R3)

(R2)と(R3)式を合成します。

CO2(aq) + H2O ⇄ H+ HCO3 (aq) (※4)

(※4)式の左辺と右辺を入れ替えます。

H+ HCO3 (aq) ⇄ CO2(aq) + H2O (※5)

(3.4)式と(※5)式を合成します。

Mg2+(aq) + HCO3(aq) ⇌ MgCO3(s) + H+(aq) (3.4)

つまり以下となります。

Mg2+(aq) + 2HCO3(aq) ⇌ MgCO3(s) + CO2(aq) + H2O

これが

Mg2++2HCO3 ⇄ MgCO3 + CO2 + H2O…(※3)

つまり(※3)と一致するので(※3)も成立していると言えます。

以上より炭酸マグネシウムが水と二酸化炭素と反応して炭酸水素イオンが発生するというのが正しいと言えます。

炭酸量とCa2+とMg2+の相関は厳密ではない

ただ問題もあると思われます。

炭酸塩硬度は炭酸水素イオンの量で測ります。

炭酸塩硬度は酸の炭酸イオンを滴定することによって決定します(下記参照)。

〔……〕

HCO3とCO32-の濃度費はpH値に依存します。炭酸イオンはpH値が約 8 以上でのみ存在するため、天然水のANC値(4.3<pH<8.2)は炭酸水素イオンの濃度(mmol/L)とおよそ同じになります。

メルク, アクアメルク® 炭酸塩硬度テスト

炭酸塩硬度は炭酸イオンで測るか炭酸水素イオンで測るか分かれますが、どちらにせよどちらかを測っています。

つまり厳密にCa2+とMg2+の量を測っているわけではないので、上で述べたようにサンゴや石の溶解で炭酸水素イオンが発生しているならCa2+とMg2+と相関がありますが、たとえば陽イオン交換の場合、炭酸水素イオンが関係ないので、炭酸塩硬度が低いけど、Ca2+とMg2+は多いという状況もありえそうです。

ただ、水槽内でアルカリにする物質はだいたいサンゴや石なので、炭酸水素イオンは発生していると思われます。

つまり水槽をアルカリにするような物質が水槽内にあるなら炭酸水素イオンが発生しているとみなせるでしょう。

実際に炭酸塩硬度が高いなら炭酸水素イオンはたくさんあるので、炭酸水素イオンの反応を追うのは大切です。

炭酸水素イオンとpH緩衝作用

pHの低下による形態の変化は酸性によって水素イオン濃度が高まると,炭酸イオン(CO32-)は周りの酸性の元となる水素イオン(H+)と結合して,炭酸水素イオン(HCO3),つぎには炭酸(H2CO3)と変わり,酸を中和していく.

〔……〕

なお,酸性を中和する能力は炭酸水素イオンにも存在する.そのことは炭酸水素イオン(HCO3)に
もまた1分子で水素イオン(H+)1個と結合する能力があるからである.

〔……〕

このことは他の炭酸塩でも云えることで,例えば炭酸マグネシウム(MgCO3)の溶解度積は10-5と大きく炭酸イオン(CO32-)の放出も大きい.このことは炭酸カルシウムより溶けやすいことを意味する.そのため炭酸カルシウムと同じpHでも溶解度が大きくなる.当然水素イオン(H+)を中和する能力も高く,同じ量を土壌に施用すると炭酸マグネシウムの方が炭酸カルシウムよりpHは高くなる.

水野 直治, 農業技術に対する物理・化学の応用, 農業および園芸 養賢堂 91巻12号 p. 1189-1203 2016年

つまり炭酸イオンや炭酸水素イオンにはpHが下がってきたらH+を水中から奪うのでpHが上がります。つまりpH緩衝作用があり、なかなかpHが下がりません。

炭酸塩硬度が高いときは炭酸イオンや炭酸水素イオンが存在するので、炭酸塩硬度が高いときはpHの低下を抑える作用があると言えます。

また上で炭酸マグネシウムが炭酸イオンを放出するのかという話でやや怪しい化学反応式を書きましたが、どういう経緯であれ炭酸マグネシウムは炭酸イオンを放出するのは確かなようなので、炭酸イオンはpHによって炭酸水素イオンになったり炭酸イオンであったりするので、炭酸マグネシウムで炭酸イオンか炭酸水素イオンが生じるというのは確かと言えそうです。

話を整理すると

石やサンゴはpHを上げる作用があります。

このときpHを上げる要因は二つです。

  • サンゴや石の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの化学平衡
  • 陽イオン交換

炭酸カルシウムの化学平衡は二系統あります。

Ca2+ (aq) + CO32- (aq) ⇄ CaCO3(s) (R5)

Ca2++2HCO3 ⇄ CaCO3+H2O+CO2… …④

Mg2++2HCO3 ⇄ MgCO3 + CO2 + H2O…⑤

最初の式(R5)は生物が介在するようです。通常は④⑤式と思われます。

④⑤式の場合炭酸水素イオンが発生し、これにはpH緩衝作用、つまり酸性になってきたらpHを下げにくくする作用があります。また炭酸塩硬度KHも上昇します。

また陽イオン交換によってCa2+とMg2+と水中のH+イオンが交換されpHが上がるという現象もあります。

この時炭酸塩硬度KHは炭酸水素イオンが増えないのであまり変化が無いと考えられますが、Ca2+とMg2+は水中に放出されるので総硬度は上がります。さらに石などが陽イオン交換能力を失っておらずまだ反応する余地があるならpHを上げるか下げ止まらせる能力は健在です。

つまり炭酸塩硬度が高いならpHは下がりにくい、総硬度が高くなるならpHは上がりやすいと言え、どちらにせよ炭酸塩硬度、総硬度ともに上がるならpHはアルカリに寄るか下げ止まると言えます。

まとめ【硬度とpHには関係がある】

硬度が高い状態ならpHが上がっている可能性がある、炭酸塩硬度が高い状態ならpHは下がりにくいと言えます。

硬度が上がると炭酸水素イオンの濃度が上がる。炭酸水素イオンはpHを上げるあるいは下がらないようにする効果があるからpHを下げるときは硬度を落とす、pHを上げたいなら硬度を上げるとよい

最初に述べたこの話は「硬度=炭酸塩硬度」と読み直したほうがよさそうです。

実際総硬度では炭酸水素イオンの濃度は上がっているときとそうでないときがあり、ちょっと挙動が異なります。

アクアリウムで炭酸塩硬度を測っているときは炭酸水素イオンがpH緩衝作用を持つので結局pHは下がりにくいので、水換えやエアレーションなどで炭酸水素イオンを減らせばpHは多少下がりやすくなるかもしれません。

炭酸塩硬度KHを測りたいならテスターが売られているので測ってみてはいかがでしょうか。

最後に炭酸塩硬度とエアレーションの関係を述べて終わります。

CO2(g) ⇄ CO2(aq) (R1)

CO2(aq) + H2O ⇄ H2CO3(aq) (R2)

H2CO3(aq) ⇄ H+ HCO3 (aq) (R3)

HCO3 (aq) ⇄ H+ CO32- (aq) (R4)

Ca2+ (aq) + CO32- (aq) ⇄ CaCO3(s) (R5)

文献(1):藤田 紗江, 藤田 浩輝, 笹岡 聖也, 中野 幸夫, 海洋酸性化によって石灰化生物が行う炭酸カルシウムの形成が阻害されることを観察できる実験教材の開発と高等学校での授業実践による教材の評価, 科学教育研究/47 巻 (2023) 1 号.

エアレーションをすると水中のCO2は逃げます。

つまり(R2)でCO2が減少し、平衡が左に移動しH2CO3(aq)が減少、次に(R3)でH2CO3(aq)が減少し平衡が左に移動しHCO3 (aq) が減少します。

すると炭酸水素イオンHCO3 (aq)が減少するのでKHが減少します。するとpHが多少下がりやすくなるでしょう。