水槽トラブル・飼育方法

水槽の二酸化炭素濃度が高すぎる場合の問題【CO2中毒など】

水槽トラブル・飼育方法

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今回はCO2中毒に関する解説です。

以前当サイトでCO2(二酸化炭素)とエアレーションについて解説した際、CO2の過剰添加で発生する問題について扱いました。

エアレーションとの関係を述べるためにCO2が多すぎる場合の問題についてあまりまとめきれていなかったので、今回はCO2が多すぎるときに発生する問題についてまとめます。

CO2中毒

二酸化炭素を添加すると原理的に添加した二酸化炭素濃度まで水中の二酸化炭素濃度は上昇します。

二酸化炭素濃度が高くなりすぎると発生するのがCO2中毒です。

  • 魚が水面で鼻上げ動作をし続けている
  • 動きが鈍る
  • 水面に魚が集まる

CO2を添加することでこのような症状が発生したらCO2中毒を疑ったほうがいいと思います。

CO2中毒のときに魚に起こっていること

詳細は以下の記事でも扱っています。

簡単に言うと以下にまとめたような作用で魚にダメージが発生するということです。ただし定説はまだ確立されていないようです。

  • 細胞にCO2が大量に取り込まれ水素イオンH+が発生して体内が酸性化する。これが心筋などの収縮性を低下させる
  • 上と同じように発生したHによって,ヘモグロビンと酸素との結合が抑制され、酸素の取り込みに支障をきたして酸欠状態になる
  • CO2そのものに高濃度では毒性がある

CO2による細胞内pHの低下が心筋の収縮性を低下させることが,哺乳類をはじめ広く知られている18,19).

文献(1):石松 惇, 吉川 貴志, 林 正裕, 喜田 潤, 海水環境: 高二酸化炭素の影響, 日本海水学会誌/57 巻 (2003) 4 号

高CO2環境下ではこれらの効果のために,ヘモグロビンと酸素との結合が抑制される.

文献(2):石松 惇, 喜田 潤, CO2が魚類に与える影響について, 魚類学雑誌46 (1): 1-13, 1998.

これらの酸性化による毒性に加え,CO2自体も動物細胞にとって毒性を持つ (Max,1991)。

文献(3):吉川|貴志, 二酸化炭素が海産魚卵および仔稚魚に与える影響, 海生研研報,第 7号, 1-33,2004

心拍数に影響を与えると弱るというのは人間でも一緒ですよね。

また酸素の取り込みに支障をきたせば弱るのも想像がつきます。

そして気体濃度が大きく偏れば害になるというのもあり得そうな話です。私たちの身の回りで様々なガスが利用されていますけど高濃度ガスを吸入すると危険な場合があるという話はよく聞きます。

こうした害を総称してCO2中毒とアクアリウムの世界では呼んでいるようです。

CO2が酸素を追い出すから酸欠になっているわけではなさそう

二酸化炭素を添加すると酸素が逃げるという説明がされることがありますが、これははっきりした結論は出にくいと思います。

仮説としては、二酸化炭素濃度の高いCO2ガスを水中に送ると、そのガス内には酸素が少ないので、水中からそのガス内に酸素が移って、水中の酸素濃度が下がると言えなくもないですが、水草水槽の場合水草が入っているので光合成をします。

CO2を添加するのは水草に光合成をしてもらうためなので、光合成すれば水中には酸素が供給され酸素濃度が上がります。

つまり酸欠にはなりにくいはずです。

それにも関わらずCO2中毒で酸欠のような症状を起こしているということは、ヘモグロビンと酸素との結合が抑制されたことによる酸素の取り込み能力の低下によって苦しくなって酸素を求めて水面に集まっているという話のように思われます。

ただし水草水槽というのは基本的にCO2が逃げないように、酸素を水面やフィルターから取り込む能力を意図的に削っています。それによって水中の酸素濃度が低下して酸欠になるというのが光合成の止まった夜間に発生しやすくなるというのはあるので、CO2の害というより水草水槽の特徴から酸欠が起きる場合はあるので注意が必要です。

CO2中毒への対応

まずCO2中毒のような症状が発生したら飼育水を直ちに80%程度水換えします。

CO2はエアレーションでも抜けますが、抜けるのに数時間かかるので、待っていては魚が致命的な状況に陥ります。早め早めに対策をしましょう。

CO2中毒の予防

とりあえずCO2を添加したらCO2濃度を測りましょう。

以下のような簡単なキットも売っていますのでご利用ください。

pHの低下と上昇【pHの変動幅に注意】

CO2が多すぎることへの害としてpHの変動があります。

一般にpHは1程度急変するとマズイと言われています。そのような変動幅のときは緩やかに変化させるのが重要です。

購入直後の生体を水合わせするのはこの意味でも重要なのです。

CO2を添加しすぎるとpHが1~2程度変動するというのはあり得ます。

pHが下がるとき

まずpHが下がるとき。

水中でのCO2は以下の化学平衡の状態を保っています。(文献(4):河野 健, 海洋酸性化研究の動向, 科学技術動向 2010 年 2 月号.)

  • CO2+H2O ↔ H2CO3 (1)
  • H2CO3 ↔ H+HCO3 (2)
  • HCO3 ↔ H+CO32- (3)

CO2が増えると化学平衡の法則から(1)式の右辺が増加し、すると(2)式の左辺が増えて、(2)式の右辺が増えます。

つまりH+が増加するのでpHが低下します。

たくさんCO2を添加するとpHがかなり下がる可能性があるので、添加を始めたばかりの水槽ではpHを測って、pHが大きく変動していないか確認するといいでしょう。

頻繁に測ることになるでしょうからpHメーターの使用をおすすめします。アクアメーカーから出ているものとして以下の製品があります。

もちろん変動幅が大きければCO2の添加量を見直します。

pHが上がるとき

次はpHが上がるとき。

これは夜間の酸欠対策でエアレーションすると発生する可能性が高いです。

エアレーションするとCO2が抜けます。

すると上で解説した(1)式と(2)式の反応と逆の状態になり、H+が減ります。するとpHが上昇します。

このためより安全に水草水槽の夜間の酸欠を防止したいなら、以下のようにするといいかもしれません。

  • 消灯1時間前にCO2の添加をストップ
  • 消灯後エアレーションを開始する

消灯前にCO2の添加をストップすると水草が水中に残ったCO2を消費してくれるので緩やかにpHが上がります。

そこからエアレーションでCO2を抜けばよりpHの上昇は緩やかになるのではないかという話です。

ただし緩やかになっても水槽内の元々のCO2の濃度が高すぎれば最終的に大きく変動してしまうので、pHをチェックして、変動幅が大きければCO2の添加量を見直したほうがいいと思います。

夜間はエアレーションしたほうがいい

水草水槽の場合は夜間にCO2の添加を止め、エアレーションするとよいでしょう。

  • 夜間にCO2を添加するとCO2が消費されないのでCO2濃度が寝ている間に増加しすぎる可能性がある→夜間はCO2添加を停止する
  • 夜間は光合成による酸素供給が滞るので、酸素を利用する魚やろ過バクテリアの活性が落ちてよくない→夜間はエアレーションする
  • 夜間は水草もバクテリアも魚もすべて呼吸により酸素を消費してCO2を排出するのでCO2濃度が上昇する→夜間にCO2を抜くためにエアレーションする

以下おすすめのエアレーション装置一式です。静音性(水心)と水中への酸素供給の良さ(いぶきのエアーストーン)から選択しています。

まとめ【CO2は多すぎるとよくない】

今回はCO2を過剰に添加するとどうなるかという内容で解説しました。

CO2中毒やpHの変動は生体にダメージを与えて危険な状態になる場合があります。

適切にCO2を添加して水草水槽を成功させましょう。

とりあえずCO2濃度は測りましょう