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今回は金魚の夏の高水温対策について解説します。
金魚に対する夏の高水温の悪影響は概ね以下のようになります。
基本的に水槽の飼育水の中の酸素というのは高水温になればなるほど減少します。

上の記事で小難しい計算をしていますが、要するに高水温になると酸素が水中に溶け込むスピードが減少し、なおかつ飽和溶存酸素量という水中へ溶け込む酸素量の上限が減っていくので、酸素が足りなくなりやすいということです。
上の記事はメダカを対象にしていますが、金魚も同様で、酸素が足りなくなれば当然酸欠で鼻上げ動作・口パクパク動作などを行いなんとか酸素を取り込もうともがきます。

上の記事で書きましたが、硝化と呼ばれる生物ろ過を行ってくれるバクテリアである硝化細菌は酸素を消費して活動する好気性バクテリアです。
つまり高水温になると水中の酸素が減少するため、硝化細菌の働きが鈍って、生物ろ過が弱くなります。
生物ろ過の詳細は以下の記事でも扱っているのでよろしければご覧ください。

高水温は人間に例えるとずーっとお風呂のお湯に浸かっているようなものです。
ぬるま湯なら長時間浸かっていても耐えられますが、43℃くらいの熱いお湯に長時間浸かっているとのぼせて大変なことになりますよね。
金魚もあまりにも高水温だと弱って死にます。
これは正直賛否あります。
我が家の感覚だと「35℃くらいの室温に一日中置いておいても平気」となります。
もちろん常時エアレーションはしています。
ただ色々な情報を見ているとどうも「30℃以上で危険」とか「25℃くらいが理想」みたいな情報も多いです。
これからお話する内容ともかぶるのですが、実際20℃くらいのほうが30℃の水温よりも金魚の呼吸も穏やかで体への負担は少ないと思います。
実際のところ室温35℃でも大丈夫な場合が多いと思いますが、心配なら30℃以下くらいを目指して水槽用クーラーを使うとか、室内の人間用のクーラーをつけっぱなしにするとかするといいんじゃないでしょうか。


また,急激な水温変化の実験では,実験区 2(30°C) では対照区との間に有意な差は認められなかったもの の,実験区 3 では,40°C 放置中にすべての金魚が横転 し,20°C に戻しても蘇生しなかった。この結果から, 30°C から 40°C までの間に摂餌から死に至るまでの臨界 水温が存在すると考えられ,この水温を詳細に調べることにより,徐々に摂餌が減退していくのか,あるいは突 然に摂餌が止まり死に至るのかが明らかになると考える。
播磨柚葉, 令和4年度春季大会 高校生による研究発表最優秀賞を受賞して「強振動と急激な水温変化が及ぼす金魚摂餌への影響」, 日本水産学会誌/88 巻 (2022) 6 号
基本的に40℃以上になると金魚は死にます。
そして30℃なら比較的問題なく生きています。
そのため30℃から40℃の間に限界値があると考えられています。
なので上で述べたように安全に飼育したいなら30℃以下を保つ、もし自然に任せていいよというときは35℃くらいなら様子を見るでいいんじゃないでしょうか。
もちろん直射日光を水槽に当てると40℃以上の水温になりやすいので、夏場は特に遮光して水温が40℃を上回らないようにすべきです。
色揚げなどで日光浴をさせたいなら昼間の1〜2時間だけ日光浴させてそれ以外は遮光するなども有効です。

なお金魚は順化つまり日頃の水温が高いほど致死高水温が上がる生き物です。
今、0℃の水で飼育すると致死温度の上限は27℃であるが、この金魚を25℃の水に順化させると水温37℃まで棲息可能である。
小坂光男, 山根基, 松本 実, 加藤貴英, 松井信夫, 温熱ストレスによる生体機能の修飾, 中京大学体育学論叢 43-1,77-86 2001
この文献の図7ですが、順化水温がいくら高くてもその生存上限は40℃を超えることはありません。
つまり夏場で平均水温が25℃位の環境なら37℃くらいまではかろうじて生きると考えられますが、やはり40℃の壁は超えられないようです。
この話から我が家の金魚水槽で夏場に室温35℃でも金魚が夏を越した話もある程度妥当な結果と言えます。
金魚の酸欠を考えるためにそもそも金魚はどのくらいの酸素を消費しているのかということを考えます。
これらから魚の標準代謝に要する酸素消費量RO(O2-ml/s)は
RO=0.0070w3/4……(6)
で表される。〔……〕
これより,養魚1尾当たりの酸素消費量は概ね標準代謝で消費される酸素量(6)式の1 – 5倍程度であることが分かる。
石田 善久, 木村 晴保, 養殖魚の魚体長と魚体重,放養密度および酸素消費の関係, 水産工学/39 巻 (2002-2003) 2 号
上の文献ではwは魚体重(kg)とされています。
一般に,魚の体長と体重の関係はアロメトリー式で表され,11)キンギョにおいても,標準体長(SL, mm)と体重(BW, g)は次のアロメトリー式で近似された。
BW=0.00004×SL2.9327 (R2 =0.9412)
吉田 恵史郎 , 金子 豊二, キンギョCarassius auratusを用いた観賞魚を健全に飼育できる最大許容密度の推定, 日本水産学会誌/89 巻 (2023) 1 号
体長5cmと10cmと15cmの金魚の推定体重は以下のように計算されます。
体長5cm:BW = 0.00004✕(50)2.9327≒3.84[g]
体長10cm:BW = 0.00004✕(100)2.9327≒29.3[g]
体長15cm:BW = 0.00004✕(150)2.9327≒96.4[g]
ここから体長5cm, 10cm, 15cmの金魚の酸素消費量の推定値は以下となります。
体長5cm:RO=0.0070(0.00384)3/4≒1.08✕10-4[ml/s]
体長10cm:RO=0.0070(0.0293)3/4≒4.96✕10-4[ml/s]
体長15cm:RO=0.0070(0.0964)3/4≒1.21✕10-3[ml/s]
これの5倍くらいまで消費する可能性があるので、金魚の酸素消費量は多めに見積もると以下のように計算できます。
体長5cm:RO=5✕1.08✕10-4[ml/s]=5.4✕10-4[ml/s]
体長10cm:RO=5✕4.96✕10-4[ml/s]=24.8✕10-4[ml/s]
体長15cm:RO=5✕1.21✕10-3[ml/s]=6.05✕10-3[ml/s]

上の記事で計算しましたがエアレーションすると2.8[mg/L]酸素が増加します。例えば30cmキューブ水槽の場合水量は約23Lなので2.8✕23=64.4mg酸素が増加します。
| 水槽 | サイズ | 水量 |
| 30cmキューブ水槽 | 30×30×30cm | 約22〜24L |
| 45cm規格水槽 | 45×27×30cm | 約29~31L |
| 60cm規格水槽 | 60×30×36cm | 約59L |
これは300[s]での話なので、64.4÷300≒0.215[mg/s]の酸素増加量です。
酸素は1.43[mg/ml]程度なので金魚の酸素消費量は以下と見積もれます。
体長5cm:RO=7.722✕10-4[mg/s]
体長10cm:RO=35.5✕10-4[mg/s]
体長15cm:RO=8.65✕10-3[mg/s]
ここから金魚が飼えそうな匹数は以下となります。
体長5cm:0.215÷0.0007722≒278[匹]
体長10cm:0.215÷0.00355≒60[匹]
体長15cm:0.215÷0.00865≒24[匹]
まあ酸素量だけで見るとエアレーションすれば特に問題にはならないと思われます。
次が風だけが酸素を運んでくる屋外飼育。
風による再曝気の酸素供給能力は0.00028[mg/L/s]程度です。
これが30cmキューブ水槽の23Lと仮定すると0.0064[mg/s]程度。
ここから金魚が飼えそうな匹数は以下となります。
体長5cm:0.0064÷0.0007722≒8[匹]
体長10cm:0.0064÷0.00355≒2[匹]
体長15cm:0.0064÷0.00865≒1[匹]
だいたい10cmの金魚では体長1cmに対して飼育水1Lの法則、15cmの金魚では体長1cmに対して飼育水2Lの法則が適用されるくらいですね。

この話からわかるように金魚を外飼いでエアレーション無しで飼育する場合適正匹数を守らないとすぐに酸欠になるのがわかります。
特に夏は高水温による酸欠が起きやすいので、エアレーションをしたほうが無難です。
そうでないなら適正匹数を守るようにしましょう。
金魚は高水温になればなるほど呼吸数が増大します。
参考(1):平間(村山) 幸子, 北野 日出男, キンギョCarassius auratusの呼吸運動(鯉蓋開閉)に与える水温および水中溶存酸素量の影響, 生物教育/37 巻 (1997) 1-2 号
この参考(1)の表1によると1分間の鰓蓋開閉回数[回数/分]の平均値は10℃で60.7±6.9、20℃で110.2±13.5、30℃で148.9±14.2となっています。±のあとの数値は標準偏差です。
水温が上がると金魚の呼吸数は上昇します。
これの何がまずいかというと酸素消費量が上がって酸欠になりやすくなるばかりでなく、それだけ代謝が上がって体力を消耗するので弱りやすくなるということです。
しかもじゃあたくさんエサを与えれば体力がつくだろうと給餌量を増やすと高水温ではバクテリアが弱るのでたくさん与えたエサの分解が滞り、水質が悪化します。するとますます金魚は弱っていくわけです。
対策としてはエアレーションとろ過(特に生物ろ過)を行うことになります。酸素が多ければろ過バクテリアは減らないからです。
エアーリフト式の投げ込みフィルターはエアレーションとろ過を両方できるのでおすすめです。
水温が高すぎると確かに体力を消耗するので弱りやすいですが、ここまで述べたように35℃〜37℃くらいなら耐えられると言われているので、クーラーとかで中途半端に冷やさなくてもうまく行くことも多いでしょう。
夏にエサの量を減らしたりせずにエアレーションをしっかりやれば夏を乗り切れる金魚も多いと思います。
もちろん室内飼育で常に水温を30℃以下に保てるならそのほうがいいと思いますが、魚は±2℃の急激な水温変化で水温ショックを起こしやすいと言われているため、水温が低い方への急変(急冷)には注意してください。冷やすなら一日の水温変化は少ないほうがいいです。


一番大事なのはエアレーションすることです。上の話でも夏場の35℃くらいなら金魚は耐えられることが多いと考えられ、やはり一番の懸念は酸素だからです。
比較的静音で使いやすいエアーポンプが水心です。
エア量調節機能付きで、これ一台持っておけば30cmキューブ水槽なら弱め、60cm規格水槽なら強めなど調整が可能です。
エアーチューブはシリコン系がいいです。固くなりにくく長期間使えます。
また夏場にろ過バクテリアが減少しやすい点を考えるとエアーリフト式の投げ込み式フィルターが結構適しているように思います。エアレーションとろ過を両方可能だからです。
30cmキューブ水槽までならロカボーイSがおすすめ。
45cm規格水槽から60cm規格水槽ならロカボーイMがおすすめ。

また付属のろ過マットは定期的に買い換える必要があるのですが、ストロングスポンジを利用することでほとんど交換せずに定期的にもみ出すだけで維持が可能です。
上の動画はカメ水槽にストロングスポンジMを使った結果ですが、アンモニウムイオンがゼロで亜硝酸塩と硝酸塩がそこそこある結果となっているので生物ろ過は十分できていると思われます。ストロングスポンジは粗いスポンジで本当にろ過しているのだろうかと不安になるのですが、ろ過力はそこそこあると思います。
実際我が家の金魚水槽はロカボーイMとストロングスポンジMだけで維持できています。

もし上部フィルターなどでエアレーションはエアストーンで行うならなるべく細かい泡が出たほうが酸素はよく溶け込みます。

いぶきのエアストーンは細かい泡が出るという評価が多いです。
今回は金魚の夏の高水温対策について解説しました。
やはり酸素が鍵だと思うので、エアレーションをする、外飼いなら酸欠にならない匹数を守るような対策が重要です。

35℃くらいの猛暑でも直射日光が当たらないなら大丈夫な場合が多いです