水槽トラブル・飼育方法

グッピーをヒーター無しで飼える?【生存・繁殖に関係する温度帯】

水槽トラブル・飼育方法

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今回はグッピーをヒーター無しで飼うという話題に関する内容です。

大前提【この温度以下ではそもそも生存できない】

グッピーは基本的に熱帯地方の魚なので、ヒメダカなどのように冬眠しないですし、ある温度以下では生存できません。

一般に生存できるギリギリの水温は13℃とされています。

グッピーはその生存可能な水温がほぼ13℃以上であるから,日本の野外ではおおむね越冬しえないが,長野県戸倉・上山田温泉,福島県内郷温泉,静岡県蓮台寺温泉などの湯尻で自然繁殖をしていることが山岸ら(1966,67)により報告され,さらに人為的に鹿児島県指宿混泉,静岡県畑毛温泉などで繁殖に成功した(佐々,1971).

片山 信二, 藤曲 正登, 大田原 純子, 宮本 詢子, 二瓶 直子, 白坂 昭子, 和田 芳武, 佐々 学, 千葉市葭川に見いだされたグッピーの生息環境に関する研究, 衛生動物/23 巻 (1972) 3 号

つまり水温が13℃を下回ると生存できません。

ヒーター無しで飼育する場合は最低でも13℃以上を何らかの方法で維持する必要があります。

繁殖と水温【水温に応じて繁殖の成立・雌雄・産子数が変わる】

上で13℃が生存の限界水温と述べましたが、繁殖まで考えると13℃では繁殖できません。

どの温泉地においても,野生化の発端はききこみによると,1955年頃,熱帯魚の飼育が流行し,そのとき殖えすぎたのですてたとか,水の取かえのときに逃逸したものが,温泉廃水を含み,冬季においても水温が20℃前後に保たれる水体中で繁殖したことであると思われる.

山岸 宏, 中村 譲, 和田 芳武, 沖野 外輝夫, 中本 信忠, グッピーの生態学的研究 I : 日本の温泉地において自然繁殖するグッピーについて, 衛生動物/17 巻 (1966) 1 号

温度環境19℃のグループの雌では,配偶後60日目までに産子した個体はいなかった(図1)。24℃,および28℃のグループでは,それぞれ10個体全ての雌が産子した。

〔……〕

温度環境28℃のグループの雌は,温度環境24℃のグループの雌と比較して有意に雄偏りに子を産んでいた(Mann-WhitneyUtest,P<0.0001;図2)。

〔……〕

また,温度環境24℃のグループの雌に比べ,温度環境28℃のグループの雌の方が産んだ子の数が多かった。

工藤宏美, 狩野賢司, グッピーの産子形質に対する温度環境の影響, 東京学芸大学紀要. 自然科学系, 2011

上の2つの文献によると20℃程度の温泉排水が入り込む河川でグッピーが繁殖したという情報もありますが、19℃では産子しない傾向であるとあるので、20℃程度の温泉排水では生存が可能なので冬超えを果たし、暖かくなってくる春から秋に産子して繁殖していると思われます。

つまりグッピーが繁殖するには24℃程度必要で、19℃程度では産子しないのでしょう。

また稚魚の雌雄は24℃より28℃のほうがオスが生まれる割合が増える、そもそもの生まれる稚魚の数が増えるとあるので、繁殖を狙うなら水温は24℃より高いほうがよさそうです。

個人的に思うのは、グッピーは3ペアスタートで雌雄が1:1で産まれてそれが全て生き残ると単純計算で3ヶ月で1350匹程度まで爆発的に増殖します。計算は以下の記事でやっています。

ある程度脱落する個体がいるとしても、メスを1:1で産み続けるとエサの量が自然界では限定されるので脱落する個体ばかりになるため、メスの数を絞って産卵数を最低限確保しつつ、色々なパターンのオスをたくさん産んで遺伝的多様性を殖やして生存に有利な稚魚を増やそうとしているのかもしれないですね。

グッピーをヒーター無しで飼育する方法

あくまで可能性の話をしているので、脱落個体をゼロにはできません。一番生体に優しいのはちゃんと26度程度の水槽用ヒーターを使うことです。

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とりあえず冬越しして春から秋に繁殖させる場合

冬越しするだけなら冬に水温を13℃以上に何らかの方法で保温すれば可能性はゼロではありません。

エアコンを冬の間つけっぱなしにして、設定温度を20℃以上くらいにしておけばなんとか冬越しはできるかもしれません。なぜ13℃ではなく20℃なのかというと、エアコンの設定温度と実際の室温には4℃程度の誤差が生じるからです。余裕と安全率を考えて20℃くらいとしました。

エアコンは、室内機の天面から吸い込んだ空気で室温を測定しています。そのため、お部屋(ひとがいる位置)の室温と設定温度には、3~4℃程度の差が生じる場合があります。

Panasonic, エアコンの冷房運転で設定温度にならないときは(室温と設定温度に差がある)

エアコンなどで室温を管理しないならやはり水槽用ヒーターを使いましょう。通常の26℃ではなく、より低い温度に設定します。

ただ13℃指定できるヒーターはほぼ無いので、多くのヒーター用サーモスタットの最低温度である15℃程度にして冬越しだけ最低限させて、春になってから最低気温が15℃以上になる日が続くようならそのまま放置すればいいかもしれません。

生存のための最低温度を維持しつつ春から秋にかけて気温上昇とともに水温が自然に上がるので繁殖も自然に始まるでしょう。

ただ、温泉排水の生存温度を考えてみると最低水温20℃以上で繁殖とあるので、できればサーモスタットを20℃以上に設定しておいたほうがリスクは少ないと思われます。15℃くらいで生存する個体はいるでしょうけど、寒すぎて脱落する個体も多く、最悪の場合春になったら水槽のグッピーがゼロだったという可能性も有りえます。

またヒーター無しでグッピーを飼いたいという場合、一番の目的は電気代の削減です。

ヒーターの設定温度を下げるのは電気代削減になりますが、水槽のガラスからの伝熱量も大きいので、断熱素材で簡単にでいいので保温するとさらに電気代が削減できますよ。

上のGEXの省エネバックスクリーンは程よい厚みの断熱材で水槽を保温できます。観賞用の水槽前面に断熱材を貼らずに横と後ろだけグルッと貼って電気代を30%程度削減できるとあり、鑑賞性もそれほど損なわずに保温できるのでなかなか優秀な保温素材です。

ただ注意点としては春から夏ころ、夏から秋ころにヒーターの設定温度を徐々に上げる・下げるようにしないと水温ショックで脱落する個体が増えると思います。

一般に観賞魚はプラスマイナス2℃で水温ショックで弱るとされており、平均気温24℃でヒーターの設定温度15℃だと落差9℃で生体に負担がかかりすぎることが予想されます。平均気温24度くらいならヒーターの設定温度も20度とか22℃とかに上げていかないと脱落個体は増える可能性があるので注意してください。夏から秋はこの逆の操作が必要になります。

冬でも繁殖も狙いたいならヒーターは必須【24℃以上必要】

冬でも繁殖を狙いたいならやはりヒーターは必須です。

24℃から28℃程度が産卵に適した水温です。よりたくさん繁殖させたいなら24℃よりも水温を上げて、26℃から28℃くらいにヒーターを設定します。

その場合26℃設定のオートヒーターで十分です。水槽の水量に適合したヒーターを使いましょう。

水槽サイズ水量
30cmキューブ水槽30×30×30cm約25L
45cm規格水槽45×27×30cm約29~31L
60cm規格水槽60×30×36cm約59L
スクロールできます

45cm水槽までなら以下がおすすめです。サーモスタットが2段階入っており、空焚きで通電遮断されても再使用可能です(2段階どっちも働くと再使用不可)。

60cm水槽なら以下がおすすめです。

ただし、30℃以上になると高温過ぎて稚魚・成魚双方で生存率が下がっていくので、夏は水槽用クーラーや人間用のエアコンが必要です。日中家にいることが可能ならペットボトルでもなんとかなるかもしれません。

本格的な夏に入る前で室温30℃くらいなら冷却ファンでもなんとかなる可能性があります。

まとめ【グッピーをヒーター無しで飼育するのは放置では無理】

今回はグッピーをヒーター無しで飼育するという話題を解説しました。

基本的に水温13℃以上を何らかの方法で維持できればヒーター無しでも飼育可能かもしれません。

ただやはりヒーターは保険として入れておいたほうがいいでしょう。

なんとか冬に全滅させないで冬越しさせるだけなら15℃〜20℃くらいに水槽用サーモスタットを設定すれば電気代を削減をしつつ春までもたせられるかもしれません。

20℃以下くらいだと生存はできても繁殖はしません