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今回は金魚飼育でエアーポンプの代わりになるものはないのか、という話題について解説します。
なるべくお金をかけたくない…
金魚を飼育しているとブクブク(エアーレーション)なしでも飼いたくなりますよね。
きれいな金魚鉢にはブクブクはないですし、エアーポンプはうるさいですし、電気代もかかります。
エアーポンプの電源コードは美観を損ないますし、エアーチューブが水槽に入っていても美観を損ねます。
なんとかエアーポンプなしで金魚を飼育できないかと考えるのもわからないではないです。
エアーポンプの役割
そうは言ってもなくてもいいなら多くの人がエアーポンプなしで飼育するはずです。
エアーポンプによるエアレーションにはそれなりに必要な理由があるのです。
というわけで最初に結論を述べると以下のようになります。
電気代も必要な機器の代金もそれほどでもないし、デメリットの方が多いのでエアレーションしましょう
というわけでこれから解説していきます。
酸素の供給【ガス交換】
エアレーションの一番の役割というのは酸素の供給です。
エアレーションすることによる酸素の供給ルートは以下の二つです。
- 気泡が水中を通過するときのガス交換による酸素の供給
- 水面に到達した気泡が水面付近に流れを作るときの再曝気効果による酸素の供給
エアレーションで空気中の酸素が水中に放たれるとガス交換が起きて酸素が水中へ供給されます。
詳しくは以下の記事もご覧ください。
この時の理論式が以下となります。(参考1:平山 公明, 今岡 正美, 片山 けい子, 総括酸素移動容量係数の算出方法に関する考察, 山梨大學工學部研究報告 30 94-98, 1979)
\(\frac{dC_L}{dt}=K_{L}a(C_{s}-C_{L})\)
ここで各種記号の意味は以下となります。単位の表現は意味が変わらない範囲で多少変えています。
CL:水中の溶存酸素濃度[mg/L]
t:時間[s]
KLa:総括物質移動容量係数[1/s]
Cs:水中の飽和溶存酸素濃度[mg/L]、つまり水中に溶け込む酸素の限界量
この式から、現在の溶存酸素濃度が小さければたくさん溶け込むし、KLaが大きくなればたくさん溶け込むということです。
ここからさらに以下の参考2、参考3の情報からKLaは以下のようにまとめることができます。
参考2:寺嶋 光春, Rajeev Goel, 安井 英斉, 数値流体力学(CFD)を使った曝気槽の解析(下水・廃水処理技術,大気・水保全技術), 環境工学総合シンポジウム講演論文集/2004.14 巻 (2004)
参考3:橋本 康史, 垂直管内二相流における気泡群の生成挙動, 東京大学卒業論文, 2002年
\(K_{L}a=\frac{12・\psi}{\kappa・d_{B}^{\frac{5}{4}}}\sqrt{\frac{D_{L}^{O_{2}}\sqrt{\frac{8g}{3C_{d}}}}{\pi }}\)
ここで各記号の意味は以下となります。
Cd:抗力係数
g:重力加速度[m/s2]
dB:気泡径[m]
\(D_{L}^{O_{2}}\):酸素拡散係数[m2/s]、温度と圧力・何に何を拡散させるかで決まるが、ここでは定数とする
\(\psi\):気泡のホールドアップ[-]、つまり浴槽体積に対する気泡体積の合計
\(\kappa\):補正係数[-]
複雑な式になりましたが、結局何が言いたいかというとKLaが気泡径の5/4乗に反比例するので、気泡径が大きければKLaが小さくなって酸素の溶け込みは少なくなる、気泡径が小さければKLaが大きくなって酸素の溶け込みが良くなるということです。
つまり細かい泡でシュワシュワとエアレーションしたほうが、ガス交換の意味では酸素が良く溶け込みます。
酸素の供給【再曝気】
水面付近が波打ったり、水面に流れができたりすると再曝気と呼ばれる現象で空気中の酸素が水面から水中に溶け込みます。
詳細は以下の記事もご覧ください。
この時の理論式は以下となります。
tは時間[s]、k2 は再曝気係数[1/s]です。そのほかの記号はガス交換の時の式と同様です。
再曝気係数が大きいときはどういうときかというと、レイノルズ数が高いときに大きくなります。
参考4:奥野未知香, 開水路流れの再曝気に関する実験的研究, 山口大学水圏環境工学研究室
レイノルズ数というのは流れの複雑さを表す数で、大きいほど流れが複雑になります。つまり水面の揺れの程度が激しいとか、水面付近の流れが速いときにレイノルズ数が増えるので、そういうときに再曝気係数が大きくなります。
よく水中への酸素供給で大事なのは水面を揺らすことだと言われますが、それは再曝気のことを言っていると思われます。
外飼いのメダカが酸欠になりにくいのは、室外の自然に吹く風によって水面付近に流れができて再曝気効果で酸素が供給されるためと言われています。
エアレーションの代替手段に求められること
ここまでの話で、水中への酸素の供給は「ガス交換」か「再曝気」の二通りの方法があると述べました。
エアレーションの代替手段に求められるのはこの二つの手段のどちらか、またはどちらも満たす手段であるということです。
つまり以下のような内容が求められます。
- 水中に酸素を供給する何らかのものを添加する(主に気泡)
- 水面付近を何らかの手段で揺らす・流す
エアレーションの代替手段
ここではエアレーションの代替手段になりそうな方法を述べます。
私が思いつくのは以下の項目です。
- 室内の空気の循環に使うサーキュレーターの風の下に水槽を設置して水面を揺らす
- 酸素の出る石を投入する
- ろ過フィルターを使う
- 底の浅い横に広い水槽で超少数飼育
- 短期間多換水
また代替手段にならなそうな方法として以下があります。
- 水草を植えて光を当てる
- エアコンの風が当たるところに水槽を置く
ここからは上のそれぞれの手法に対して解説していきます。
サーキュレーターの風の下に水槽を置く
冬と夏はエアコンを使う機会が多いと思われ、そういう時期の室内の空気の循環にサーキュレーターを使う機会も多いでしょう。
そういうときにサーキュレーターの風の下に水槽を置けば水面が波打ち再曝気効果で酸素が供給される可能性があります。
ただ後述するエアコンの風を当てるのところでも解説しますが、エアコンの風は室温を上がるとか下げるとかするために、冷たすぎる・暑すぎる空気が吐き出されています。
エアコンの空気を直で水面に当てるようなやり方をすると、水槽の水温が急変して、水温ショックを起こす危険性があります。プラスマイナス2℃以上の急変はご法度ですので、サーキュレーターの風を当てるときは水温計で水温をよく測りながら加減してください。
またこのやり方に欠点が無いのかというとそうでもなく、再曝気は水面付近に酸素が供給されるだけなので、水底の酸素が少なくなりがちです。浅い水槽でサーキュレーターを使わないと生体が酸欠になりやすいので注意してください。
また生体が多ければ当然酸素が足りなくなる可能性もあるので、様子を見ながらやるなら自己責任で行ってください。
酸素の出る石を使う
酸素の出る石というものが販売されています。これなら水槽に酸素を直接添加できます。
3Lまでの水槽で8個入りで約500円弱。石一つで1か月程度もつようです。
隠されたメリットとしてエアーポンプの電気代よりお得になる場合があるという点があります。
石一個のコストは63円程度です。
エアーポンプの電気代は電気単価を1kWhあたり40円とします。(参考5:東京電力エナジーパートナー, 従量電灯B・C)
エアーポンプの消費電力は水心SSPP-3Sを利用するとして2.5Wの出力とします。
2.5Wをひと月利用するとすると消費電力は以下となります。
2.5W×24Wh×30日=1.8kWh
よってひと月の電気代は1.8×40=72円となります。
これは300kWhを超過した場合の電気料金を参考にしました。これより少ない電力消費なら当然もっと安くなるのですが、電気を多く使うご家庭の場合、酸素を出す石をひと月使うコストは63円程度、エアーポンプの電気代がひと月72円程度なので、単純な比較では酸素を出す石を利用するのもアリかもしれません。
特に小さい水槽でエアレーションしたくないならアリかもしれませんね。
ろ過フィルターを使う
単純にエアレーションするときのホースが邪魔という場合は、ろ過フィルターを使うと酸素を供給することができます。
投げ込みフィルターやスポンジフィルターだとエアレーションしてしまうので、除外するとして、外部フィルターとか外掛けフィルターでも酸素は供給されます。
これらのフィルターは再曝気現象が発生するので酸素が供給されます。
外部フィルターの場合は水の吐き出し口を水面付近にして水面を波打たせるとよいでしょう。
外部フィルターや外掛けフィルターならろ過槽が水槽外にあるので水槽内を広く使えるため、検討してみてはいかがでしょうか。
またエアレーションしてもいいかもと考えが変わってきたなら、投げ込みフィルターやスポンジフィルターを使うとろ過とエアレーション両方できていいですよ。
底の浅い横に広い水槽で超少数飼育
水面からの酸素の供給は無風でも多少はあるので、底が浅い水槽を利用して水底の酸素不足を回避して、横に広い水槽を使って水面の面積を稼げば多少は酸素供給が多くなります。そこに酸素をあまり消費しない超少数飼育をすればうまくいくかもしれません。
具体的にどのくらいの広さならいいのかというのは魚の種類にもよりますし、やったことがないので手さぐりで頑張るしかないのですが、理屈では可能性はゼロではないという意味で紹介しました。
手探りの面が強いのでやるなら自己責任でやってください。
短期間多換水
水道水にはそれなりに酸素が溶け込んでいます。
そこで魚が酸素を消費して水中の酸素濃度が低くなってくるタイミングで水換えをすれば酸欠を防げるかもしれません。
水道水の溶存酸素濃度は5mg/L以上あります。
まず、DO値の測定結果から、すべてのサンプルの水においてDO値が5 mg/L以上であることがわかった。
木村 憲喜, 中村 文子, 身近な水道水や池, 河川水の溶存酸素量(DO)と化学的酸素要求量(COD)の測定, 和歌山大学教育学部紀要. 自然科学, 2023
魚に必要な酸素濃度は魚種にもよるので一概に言えないのですが、4.29mg/Lは必要なようです。
(1) 魚介類を死に至らしめる酸素濃度の検討
丸茂恵右, 横田瑞郎, 貧酸素水塊の形成および貧酸素の生物影響に関する文献調査, 海生研研報,第15号,1-21,2012
底生動物の致死濃度 1.5mL/L(2.15㎎/L)
甲殻類の致死濃度 2.5mL/L(3.58㎎/L)
魚類・甲殻類に生理的変化を引き起こす臨界濃
度 3.0mL/L(4.29㎎/L)
また健全に飼育するなら6mg/L程度必要な場合もあります。6ppm=6mg/Lに換算しています。
Davis(1975)によれば,その濃度は淡水産サケ科魚類では6ppmである.
野川秀樹, 八木沢 功, 総 説 サケ稚魚の適正な 飼育環境, 北悔道さけ・ますふ化場 研究報告 第 48 号 H-39 頁 1994 年3月
魚種によっては健全に育成できないかもしれませんが、とりあえず生存できる4.29㎎/Lなら水道水を水槽に投入したばかりの状態なら基準を満たすので、頻繁に水換えすれば溶存酸素濃度だけの視点で言えば合格できそうです。
ただこれもデメリットは当然あって、多換水だと水質が安定しません。
ろ過バクテリアは水中にそれなりに存在するので、これがごっそりいなくなってろ過が不安定になります。
しかもエアレーションもしない、フィルターもないとなると、バクテリアを保存するものがほとんどありません。
ただし低床として砂利やソイルを入れておけば多少はバクテリアを保存できるので、多換水を実行するなら低床を入れておくと水質は多少安定するでしょう。
しかしながらおそらく水道代が跳ね上がり、エアレーションのコストを上回るのは想像に難くありません。
水草を入れるとうまくいくのは日照がある間だけ
水草は光合成をするので酸素を供給してくれます。
でもあまりおすすめしません。
というのも光合成をしている間は酸素を供給してくれてよいのですが、夜間に光合成が止まると呼吸が優勢になって酸素を逆に消費してしまい、水槽内の酸素が夜間に足りなくなって酸欠の可能性が高まります。
そのため水草水槽では夜間にエアレーションして呼吸で生じた余計な二酸化炭素を排出して、新鮮な酸素を供給するということがよくやられます。
しかしながらエアレーションしないという条件があるので、夜間の二酸化炭素濃度の上昇と酸素の不足をカバーする手段がありません。
そのためエアレーションなしで水草を飼育するのは結構リスクがあり推奨されません。
エアコンの風を直接水面に当てないほうがいい
エアコンの風は室温を上げたり下げたりするために暑すぎる・寒すぎる風が吐き出されます。
風が水面に当たることで再曝気は起きると思いますが、水温が急変する可能性があります。
水温ショックはプラスマイナス2℃以上の急激な水温変化で生じやすいので、エアコンの風を直接当てないほうがいいでしょう。
エアレーションのコスト【電気代・本体代金】
上で計算しましたが、エアレーションの電気代は月約72円です。
そこにエアーポンプ代が1800円くらい(水心 SSPP-3Sの場合)。
エアーチューブが300円くらい(スドー製)。
エアストーンが700円くらい(いぶき製)。
合計2800円くらいです。
初期投資2800円でランニングコスト月78円くらいなら、エアレーションするメリットで十分ペイできると思います。
エアレーションの代替手段は効果も安定せず、かえってコストがかさむ方法がほとんどです。
まとめ【エアレーションの代替手段はあるが、コストがかかる】
今回は金魚飼育でエアーポンプの代わりになるものはないのかという視点で解説しました。
代替手段はあるにはあるのですが、エアレーションしたほうが手間もコストも抑えられて、金魚に対するメリットも多いです。
無理にエアーポンプの代わりを探すより、お魚をちゃんと生存させるために飼育しているという視点を重視して、ちゃんとエアレーションしたほうがよいでしょう。
エアレーションなしは結構管理が難しいです